第238回 丙午の女
今年も残すところ一月となりました。来年は60年に一度の丙午(ひのえうま)の年を迎えます。
ごく最近まで「丙午の女は嫁に行けない」「丙午の女は夫を滅ぼす」などと敬遠され、現存の丙午の女性は昭和41年生まれなのですが、出生率が年々増加傾向にあった時代の中でこの年は出生率が25%も減少したのです。世代交代した今では丙午も迷信扱いされ、来年は丙午を理由に出産を控えるような動向はないと思うのですが…。
丙午の女性が敬遠された理由は「気性が激しい」と言われるからですが、これも「清楚」「控えめ」こそが女性の美徳とされた一昔前の風潮によります。男が柔和になった現在においては逆にモテ期と言えます。
少し干支の話をします。干支は甲乙丙丁戊など10の干と、子丑寅卯など12支の組み合わせから成り、全部で60通りの干支が出来ます。つまり60年周期で同じ干支の年が来ます。ですから60才を「暦が還る年」で還暦と呼びます。干支は自然界の森羅万象を符号化したもので、古代中国の殷王朝で政治や農耕、占術に使われていたことが分かっており、悠に3000年以上遡ります。
干支はそれぞれが自然界の木火土金水いずれかの性質を持つのですが、丙午は丙も午も火性同士のため火力が強まり、炎、烈火となります。そのため丙午の人は気性が激しくなってしまうのです。もちろんそこへ後天的環境や遺伝要素が入るため各々違って見えますが、丙午という先天的要素は消えないため、大人しく見える人でも気性の激しさを秘めています。
ただ「気性が激しい」は火の性質を強火にした場合で、中火にすると「明朗快活」となります。
また火性の人は勘が鋭く芸術才能に優れ、容姿も良くなるため必ず美男美女に生まれます。昭和41年生まれのスターが綺羅星のごとく並んでいるのを見ても納得です。
さて、少しは鍼灸の話もしないといけません。干支は東洋医学の原理にもなっており、それぞれの臓腑に対応しています。丙は小腸、午は心臓に配当されます。この二つの臓器には共通点があり、それは「ガンにならない」ということです。生化学的な理由として「細胞分裂が単純」ということですが、(ガン化は肺や肝臓など細胞分裂が複雑な臓器に起こりやすい)干支学的理由としては、火性なので動きが激しく高温だからと言えます。ガンになりにくい人の特徴も単純(くよくよしない)、基礎体温が高い、よく動く人です。
女王ヒミコが乱れた倭国を鎮め、およそ1800年経た今年、サナエが立ち上がりました。日本は時として女性が国を救います。時代は変わります。出産予定の方は安心してください。授かりたいと思っている方は躊躇しないでください。日本に聡明で美しい丙午の女子が多く誕生することを祈りつつ、今年最後のブログとさせていただきます。良いクリスマスとお正月を迎えてください。一年間ありがとうございました。

第238回香肌文庫 2025.12.1


